桜井:
では次に、効果音についてですが、今回の効果音については池上くんにおおよそ任せて、あまり指示を出しませんでした。
他のプロジェクトでは、そういうことはしなかったんですが、今回はそれでうまくいったので、非常に心強かったんです。
酒井:
それだけ任されるということは、池上さんは原作のゲームをほとんどやったことがあるんですか?
池上:
やってますよ。
桜井:
できあがってきたものを聞いても、あまりハズレがないんですよ。
こちらが出した指示を上手く汲み取って、頭のなかで方針を組み立てながらやってくれましたから。
池上:
おお、なんか誉められてる(笑)。
酒井:
やっぱり、ゲームをちゃんとやってるっていうことが、強く活きてるのかなあ。
うーん、ちょっと反省。
池上:
でもねえ、やっぱり難しかったですよ。
原作のゲームが無い、「スマブラDX」のオリジナルの効果音も作るわけですから。*
原作のゲームをやって理解できていたから作りやすかったっていうものもありますけど、新規のものは、まず桜井さんの考えを聞いてから作らなければならなかったから、けっこう大変でしたね。
あとは、効果音を作るうえでも「言葉の問題」はありましたよ。
例えば、「決定音を変えてくれ」っていう指示があって、そのときの桜井さんの説明が「なんていうのかなあ、こう初めてさわるゲームで決定ボタンを押したとき、ユーザーにひびくような『とっておきの音』を作ってくれ」って言われて、こっちは、「なんじゃそりゃ〜!」って(笑)。
桜井:
ボタンを押したときに、「気持ちがイイ〜ッ!」とか、ボタンを押すのが、「楽しい〜っ!」とか思えるような。
あとはもう効果音を口で説明するしかないから、「ここ『ズビャッ!』になってるけど、『ドビャーッ!』にして」とか。
でもそれで、「あ、『ドビャーッ!』ね、わかりました」っていう感じでしたね。
池上:
うん、まあ割と擬音化でなんとかなった部分っていうのが大きいですね。
桜井:
まあ昔からそうやってきたしね、ゲームボーイの頃から。
池上:
だんだんコツをつかんでくると、擬音の意味がわかってくるんですよね。「ああ、アタックが足りないんだな」とか、「余韻があるのがよくないんだな」とか。
桜井:
「アタック」と「余韻」*って重要だよね。
池上:
重要ですね。
何かの音を監修してもらったときに、「動作のフレームと音が合ってない」っていうことを桜井さんに指摘されたんですよ。
それで、調べてみると2フレームくらい音が長かったりして。
それ以降はそういう部分を気にかけていたこともあって、まあうまくいったんしゃないかなと思っているんですけど。
酒井:
あの、ゼルダチェンジの効果音が好評ですよね。
池上:
あの音については、桜井さんからの指示がなかったんですよね。
そのときは、「こういう変身の動作があるんだけど、音はどうする?」って聞かれて。
それで、「この音の演出としては、こういうものがありますけど」っていうのをいくつも提案して作っていくという流れだったんです。
桜井:
そう、いつもは全部指示するし、うまくやれない人だったら全部指示したと思うんだけど、今回は任せても大丈夫だなって思ったから、少し楽をさせてもらいました。
池上:
僕も本当に楽しく作りましたね。
音の演出の全てを自分で考えていけたので。
ゼルダチェンジの効果音も、そういうやりかたをしていたから出来たことですしね。
桜井:
うん、そういうやり方は、あらゆるスタッフがどんどんやってくれれば、本当にいいんだけどね。
でも、なかなかそうもいかなくて。
どうしても、仕様どおりに作るというやり方になってしまいがちなので、スタッフのこだわりや遊びっていうものが、もっとズバズバッと出る方法があればなあと、思わなくもないです。
池上:
大変だけれど面白いっていう感じかな。
安藤:
とにかく、楽しくやれるといいものが出来るような気がする。
酒井:
そうか、今思ったんですけど、やっぱり池上さんは、「原作のゲームを全部プレイしてる」っていう余力があるんですよね。
池上:
いや、全部はやってないですよ。
酒井:
あれ、でも全部やってるって言ってませんでしたっけ?
桜井:
確かに全部はやってないだろうけど、少なくとも池上くんは、「見て消化する」っていうことはやってますね。
池上:
あ、それはもちろんやりましたよ。
酒井:
話しを戻しちゃいますけど。
僕もね、原作のゼルダの「神殿」のマップに行って、そこを歩いて、っていうことをやったんですよ。それで、なにかが「ヒュ〜」って飛んできたりとかして。
それで、「あ、なるほどね、こういう感じね。じゃあ、『四谷怪談』みたいな曲にすればいいんじゃないかな」って、全然違う方向に行ってしまったんですよ(笑)。
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神殿のボツになった(四谷怪談)バージョン
shrin_botsu.wav(940KB) |
桜井:
ああ、そうだ。
『四谷怪談』みたいな曲があったなあ(笑)。
池上:
だから、原作のゲームをやり込んだ人の印象に残っているものって、やっぱりその人にしかわからないから、そういうのは桜井さんに聞くしかなかったんですよね。
酒井:
あとメールでのやり取り*にも限界がありますね。
電話でやりとりをすれば、「あ、桜井さんのこだわっているところは、ここなんだな」っていうのが見えますから。
桜井:
そう、電話でのやりとりだと、一応歌えますからね。例えば、「この、『たーん、たた』っていうところ」とか。
だけど、メールだと「この、何分何十秒のところ」とか、そういうふうにせざるを得ないので。
酒井:
でもね、あの桜井さんの忙しさを思うと電話しづらいんですよ(笑)。*
池上:
「効果音を入れてください」っていうメールも、出しづらいんだよ、ナ!
桜井:
それはねえ、もっと他の人がやってくれる仕事が増えれば、よろしいのではないかと。
っていうか、今後はそうしないとね。
池上:
「あの部分はどうしますか」っていう相談が、非常にしづらいんだよ、ナ!
ブースに行くと、「話しかけるなオーラ」を出してるんですよ。
桜井:
いやあ、なんというか、スミマセーン(苦笑)。
池上:
でも、ディレクターってみんなとドンドン相談するような仕事なわけだから、もう少し話しやすい雰囲気にしておいてくれないと(笑)。
桜井:
いや本当にねえ。
スマブラDXくらいの規模になってくると、ディレクターが3人とか4人いて当たり前なのに、いないから・・・
池上:
話しをを戻しますけど、効果音は数がスゴイですよ。
細かいものまで含めて4000を越えてますから。
一同:
4000?!
池上:
ちなみに、効果音を作り始めたのは、4月のオーケストラの収録が終わってからです。
酒井:
それじゃあ、約6ヶ月で4000!(笑)
池上:
キャラクターの巨大化と縮小化で、効果音の数が爆発的に増えちゃってるんですよね。
桜井:
プレイヤーキャラクター全員分の巨大化と縮小化のときの効果音が必要だから、単純に考えても1人のキャラクターにつき3通りの効果音が必要になるんです。
でも、巨大化や縮小化でキャラクターの声が低くなったり高くなったりするっていうのは、純粋に面白いですからね。 |
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