桜井:
 今回の作品で、なにか印象的だったことってありますか?
 これは言っておきたいなあ、っていうこととか。

安藤:
 「わぁ、どうしよう」っていう、オーケストラのスコアがあったんです。
 アレですよ、アレ。
 「アイスクライマー」のファンファーレです。

酒井:
 あれもねえ、僕は無理だと思った。
 でも実際は演奏できたけど。

池上:
 あれをやっちゃうんだから、スゴイよなあ。

酒井:
 スゴイよねえ。
 それも、すぐに演奏を合わせちゃうんだもんねえ。

池上:
 けっこう、事も無げにやってたもんなあ。
 アイスクライマーは、オリジナルのサウンドもすごくいいですよね。

桜井:
 しかし、ああいう曲は、「ジャズかなあ」、「うん、ジャズでしょう」っていうやりとりで、なんとかカタがつくけど、ドクターマリオとかを聞くと、「フィフティーズかなあ」、「いやあ、それは・・・」っていう話しになってしまう。
 結局それも、わがままなアレンジに対する解釈という、人それぞれで違ってくることなのかなあと、思うんですけどね。

広報:
 スミマセン。
 さっきの話しにあった、アイスクライマーのことなんですが、どういうところが難しかったんですか?

桜井:
 アイスクライマーが対戦で勝ったときのファンファーレなんですが、オーケストラでやってるんですよ。
 それが、音の取り方からいってもすごく演奏しづらいんです。*

広報:
 でも、オーケストラのひとたちは、それを・・・

酒井:
 アッという間に、やってしまったんですよ。
 それで、打ち合わせのときに、指揮者の竹本さんが、「これは難しいよねえ。まあ、ダメだったらシンセサイザーに振り替えてください」というようなことをおっしゃってたんです。
 それで、収録のときに竹本さんがオーケストラのみなさんに、「この曲は難しいですから、一回目は、ゆっくりやってみましょうか」って言ったんですが、みなさんから、「いや、そのままのテンポで」って言われたんです。
 それで実際にやってみたら、2回目か3回目でOKテイクがとれちゃったんです。

桜井:
 そう言えば、ファンファーレとカービィのダンスが合わなかったのが悲しかったなあ。
 読み込み終了のタイミングがどうなるかがポイントだったんだけど、ダンスはちゃんと合ってるんだけど、曲がズレちゃう。

池上:

 読み込み終了のタイミング? あ、読み込み時間を待ってないんだ。

桜井:
 うん、普通は待っているはずなんだけどね。
 いや、待っているようにすべきなんだけど、そこまでプログラマーと話しをする時間がなかったっていうのが、正直なところで。

酒井:
 僕はやっぱり、マリオの曲で近藤さんに誉められたことが一番嬉しかったかな。
 最初は、僕はマリオの曲を編曲する予定ではなかったんですよ。
 アイディアを出すだけの予定だったんです。
 例えば、「地下面の曲をベースにして、普通のマップの曲を乗せるのってどう?」っていう、アイディアを出していたんです。

池上:
 いや、でもあの曲を初めて聞いたときは、カルチャーショックを受けましたね。
 だって、酒井さんは、あれをものすごいスピードで作ったでしょう。一晩でしたっけ?

酒井:
 うん、まあでも、僕としてはわりと時間かけたんだけど。

桜井:
 いや、速い。
 速いですよ、明らかに。

池上:
 それで、あれを聞かされたときのショックがすごくて。
 しかも、桜井さんからメールが入ってくるじゃないですか、「イイ、イイ!すばらしい!しかも仕事が速い!」と。
 それを読んで、「あ、俺もがんばって音作ろう」っていう感じで(笑)。
 安藤さんもあの曲を聞いて奮起したと思うんですけどね。
 やっぱり、最初のあの曲にはびっくりしましたね。

酒井:
 そうですか。
 僕はてっきり、安藤さんが音源を差し替えてくれるものだと思って、アイディアだけに徹して作ったつもりだったんですね。
 結果的にそれがそのまま活きてしまったんですが。

池上:
 それが、送られてきた曲を聞いた桜井さんが、「このままでいいんじゃないか」っていうことを言ったんですよ。
 だからやっぱり、あの酒井さんが送ってきた曲っていうのは、かなり大きいインパクトがあったと思いますよ。

酒井:
 僕は、あれはアイディア出しだけのつもりで作ったものだったから、実を言うとちょっと直したいと思っていたんです。
 けれども結果的に近藤さんから、「凝ってますね」というお言葉をいただけましたから、もう満足です。

広報:
 そのマリオの曲というのは、どの場面で流れる曲なんですか?

酒井:
 アドベンチャーのキノコ王国の1面で流れる曲*です。

 ピーチ城
 peach_castle.wav(988KB)

桜井:
 あれは、通常の曲の裏で地下面の曲が流れているという、変則的でありながらも、そのうえ明るく激しいじゃないですか。
 その辺が、すごくよくって。
 特に、MIDIの特性を出し切っているというか、一次元違う音源に聞こえるような、そんな曲作りがなされていることを素人の耳でも感じて、その辺がスゴイなあと。

池上:
 僕は、E3の暗転が残念でした。

桜井:
 暗転について説明します。2000年度のE3で初めてスマブラDXのオープニングムービーが、というよりもスマブラDX自体が、いや、ゲームキューブの内容そのものが封切りになることになったんです。
 それで、オープニングムービーは、そのときを目指して作っていたんですよね。ひとつ大きな花火を上げようという気持ちで。
 説明会は、シアター形式の場所で上映することがわかっていました。そこで暗転というのを設けて、会場を真っ暗でシーンとした状態にして、20〜30秒くらいの時間をもらって、任天堂キャラクターたちの効果音がだんだん高まって集まって・・・というような舞台演出までを考えていた時期があったんです。
 それは結局ボツになっちゃったんだけれども、映像特典の最初の部分でそれを聞くことができるようになっています。
 映像特典の最初にある、白黒の部分とスローモーションの部分を、劇場の真っ暗闇で音だけで始まるという感じで想像してもらえれば、計画していたものと大体あうかなあ、と思います。

池上:
 映画館で鳴らすような音とか、オーケストラもそうなんですけど、それまでは、「仕事でやることはないだろうなあ」って思っていたことに挑戦できたっていうことに、感謝してます。
 それと、オーケストラの収録をしたスタジオっていうのは、楽器を習っていた学生の頃に、先生に連れて行ってもらったスタジオだったんですよ。
 それで見学しながら、「いつかこんなところで演奏してみたいな」って思っていたんですよ。
 だから、そういうところに編曲担当という立場で行って仕事をしたっていうのは、感慨深かったですね。
 本当に、そういうことに挑戦させてもらえて、ありがとうございました。

桜井:

 まあしかし、おかげで結構ボコボコですけどね、出るクイは打たれるという感じで。
 すごく苦労した、今回は。
 でもまあ、非常にいい経験をしたなあと。
 こんなに好き勝手やれるのも最後かなあと(笑)。

 あと、可能かどうかはこれから考えるとして、『スマブラDX』のコンサートを開いたらどうか?と考えているのですが。
 もしもコンサートを開けるとなったら、またスコアを書く自信とか、やる気とかって、ある?

酒井:
 ええ、もう!

安藤:
 はい、もちろん!

池上:
 やる気でいます!

桜井:
 みんなやる気まんまんと。

池上:
 是非、桜井さんのポケットマネーで(笑)。

桜井:
 ・・・・・・。

 なにはともあれ(笑)、今日はお疲れ様でした。




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